【就職/転職に役立つ有価証券報告書の読み方】年収を把握し、企業分析しよう

スポンサーリンク
就職転職に役立つ有価証券報告書の読み方 有価証券報告書の読み方

就活生・転職活動中の方に役立つ有価証券報告書の読み方を解説していきたいと思います。

今回は、皆さんが関心が高い年収の見方です。
企業名+年収で検索すると平均年収が出てきますが、そのソースは有価証券報告書です。

有価証券報告書ってなんだか堅苦しくて読んだことないんだよな…

公認会計士による監査の対象範囲ではありませんが、きちんとした根拠を元に、経理部や関係部署で作成している書類で信頼性が高い書類になります。
確かに堅苦しくて読みやすい書類ではありませんが、信頼性が高い情報を得られる宝庫になります。

スポンサーリンク

年収を把握するには、「従業員の状況」を見よう!

まず大手製鉄会社の新日鉄住金を例にとって有価証券報告書の年収の見方を説明したいと思います。

新日鉄従業員の状況

年収の情報ですが、有価証券報告書の【従業員の状況】に掲載されています。
従業員の状況には、
・セグメント別の人員数等が記載される(1)連結会社の状況
・平均年齢や勤続年数、平均年収が記載される(2)提出会社の状況
・(3)労働組合の状況が記載されています。

連結会社の状況

連結会社の状況には、セグメント別の人員数が掲載されています。
連結会社とは新日鉄住金(親会社)と子会社を足した新日鉄住金グループ全体を指し、グループ全体でどの事業にどの程度の従業員が従事しているかがわかります。

提出会社の状況

提出会社とは、今回の例でいえば新日鉄住金本体になります。
従業員数は単体のみの人数が記載してあります。
その他、平均年齢や平均勤続年数、平均年間給与が記載されています。

労働組合の状況

労働組合の状況には労働組合に加入しているか、どの程度が加入しているかが記載されています。
労働組合がある会社の方が雇用は守られており、ベースアップが見込めますが、現在の雇用情勢では高い組合費をとられるだけというケースが多いのではないでしょうか。

年収を見るときのポイント

ここで年収をみるときのポイントを解説したいと思います。

平均年齢とのバランスを見よう

これは当たり前の話ですが、年収だけではなく、平均年齢もみましょう。
例えば、30歳で平均年収600万の会社と40歳で平均年収700万の会社ではどちらが年収が高いか一概にはいえません。昇給カーブの形(20代から伸びるタイプか30代中盤から伸びてくるタイプか)や年功序列の会社なのか、実力主義の会社なのかにもよるからです。
おそらく、40歳で平均年収700万の会社で30歳の人は600万円はもらえないでしょうし、30歳で平均年収が600万の会社で40歳の方は周りが若く居づらくなるといった推測はできますが…

勤続年数は企業の歴史・同業他社との比較で見よう

勤続年数もみておきましょう。長く働くことができる会社かどうかみる大事な数値です。
又、その会社が設立して30年の歴史ある企業なのか、それともまだ10年の会社なのかもみましょう。設立から10年の会社は、仮に設立時からいる方でも最大で10年でだんだんと企業規模が大きくなって従業員も増えてきたと想定できるので、後から入社してから入った従業員の方が多いことを考えるとせいぜい3年がいいところです。
又、ベンチャー企業の場合は、その会社をステップアップの手段と捉えるケースが多く、前向きな転職も多くなりがちです。
その場合はあまり勤続年数が短いことをネガティブにとらえる必要はないでしょう。
又、元々の企業が合った場合でも分社化や持株会社化した場合は勤続年数が短くなるケースもあるのでそういった場合は問題ないでしょう。(分社化した場合でも注をつけた上で勤続年数を合算している会社もあります)

一方で歴史ある会社で勤続年数が短い場合は、待遇が悪い、企業風土が悪いといったなんらかの理由があるはずなので注意が必要です。
業界によっては、転職が頻繁が行われている業界もあるので、同業他社で比較するのもよいでしょう。

総合職と高卒枠の年収は分けて考えよう

今回の新日鉄住金の例が顕著なのですが、製造業の大卒以上の総合職と高卒の技能職では給与に大きく差がついてきます。
若手の内はそれほど差がないのですが、昇給のスピードが違ったり、MAXでどの程度の役職までいけるか差が出てきて30代では大きな差になっています。
製造業の場合は、特にその差が大きくなります。
新日鉄住金の平均年収をみると600万にも満たず、一見すると日本を代表する大企業にしては低いと感じるのではないでしょうか。
実は総合職のみの平均年収は、就職四季報等に掲載されており、新日鉄住金の場合は1,005万(2015年度)と平均年収は1,000万を超えています。
又、かなりレアケースだと思うのですが、管理職を平均年収の計算から除いている会社もあります。
新日鉄住金の場合はまさにそのケースで注で「平均給与は役職者を除いて計算しており…」と記載されています。役職者を除いていたら低く数字が出るのは当たり前です。

ホールディングス(持株会社)は年収が高めに出る

又、○○ホールディングスという社名の会社は、いわゆる持株会社で事業自体は行っておらず、傘下の会社へ投資・管理している会社になります。
本体の主要会社の管理職や平社員であっても一部有望な社員で構成されています。
万年平の方や新卒の方といった平均年収を押し下げる要因が排除されている集団から構成されているので、平均年収は高めにでます。

ソフトバンクNTTドコモKDDIの給与の比較がわかりやすいと思います。

ドコモ KDDI ソフトバンクグループ
2017年 8,739,000 9,532,136 11,647,660

上記の中だとソフトバンクグループが一番平均年収が高いですが、それはソフトバンクだけが持株会社だからです。実際に携帯電話事業を行っているソフトバンク株式会社は平均年収750万程になります。

持株会社かどうか見分けるポイントは、ホールディングスとついていることももちろんですが、有価証券報告書に株主関係が記載されているので、その持分比率をみることとグループの従業員数に比較してあまりにも少ない従業員で構成されている点等から判別できます。

従業員の状況の情報を元に分析してみよう

従業員の状況の情報を元にもっと企業分析を進めることもできます。

連結会社の状況からセグメント別に分析しよう

例えば、連結会社の状況には、セグメント別の人員数が記載されており、セグメント情報にはセグメント別の売上高が記載されています。
組み合わせてどの事業の売上高はどの程度で従業員数はどの程度だから一人当たり売上高はいくらだという計算も可能です。
色々な事業に展開している会社の場合はどの事業が収益性が高いのか判断することができます。
時系列で複数年を比較してみることでその事業が伸びているのか、従業員の伸び以上に売上が伸びているのかといった情報を把握し、就職に役立てることができます。

例としてキヤノンの2017年度の有価証券報告書をみてみます。
従業員の状況から以下のセグメント別の人員数が得られます。

セグメント名 人数(連結)
オフィス 103,380
イメージングシステム 55,909
産業機器その他 18,476
メディカルシステム 10,851

又、セグメント情報より以下のセグメント別の売上と利益が得られます。

セグメント 売上高 利益 利益率
オフィス 1,865,928 180,648 9.7%
イメージングシステム 1,136,188 175,913 15.5%
産業機器その他 731,704 56,788 7.8%
メディカルシステム 436,187 22,505 5.2%

この情報を組み合わせると以下のようにセグメント別の一人当たり売上高が計算でき、事業ごとの儲かり具合が把握できます。
大企業の場合はどの事業に関わるかで昇進スピードや賞与金額が大きく変わってきますので、このあたりは知っておいた方がいいです。
もちろん、自分のやりたいことで就職先を決めるのが望ましいですが、特にやりたいことも見つからず、大手に入る場合は入社後こういった知識もあった方が後悔する可能性を減らすことができます。

セグメント名 人数(連結) 売上高/人 利益/人
オフィス 103,380 18.0 1.7
イメージングシステム 55,909 20.3 3.1
産業機器その他 18,476 39.6 3.1
メディカルシステム 10,851 40.2 2.1

セグメント別の売上一人当たり売上をみるとメディカルシステムや産業機器が一人当たり売上が多く、オフィス事業の2倍程です。オフィス事業は、今後ペーパーレス化が進み、需要は減っていくかと思うので、厳しいことになるかと思います。
実際に複合機等の分野の技術者の他分野への転職者が増えているようです。

又、括弧書きで臨時従業員数も記載されており、派遣社員や契約社員をどの程度活用しているビジネスなのか読み取ることができます。
通常、派遣社員を多く活用しているビジネスの方が正社員の待遇はよくなりがちです。
派遣社員が安い給料で働いて得た恩恵を正社員が受けている構造になっているからです。
ただ、こういった構造の業界は長続きしないのではないかと思います。
個人的には製品や技術自体に競争力があり、結果給料が高い業界の方が魅力的です。

年収と一人当たり売上高を比較しよう

年収と一人当たり売上高を比較することで、その会社が稼ぐ力に対してもらいすぎなのかそれとも従業員へあまり還元していない(逆にいえばまだ余力がある)のかヒントを得ることができます。

例えば、一人当たり売上高が2,000万の会社で社員に800万払っていたらかなり厳しく、給与はいずれメスが入り、低下する可能性が高いでしょう。
一方で一人当たり売上高が1億円の会社が社員に1,200万払っていたとしてもそれは一人当たり売上高からすると割合は低く、下げ圧力はそれほど大きくないでしょう。
もちろん扱っている製品の粗利率にもよりますが、大枠として一人当たりで扱う金額が大きい業界程年収が高くなる傾向があります。
高給な業界としてはコンサル、商社、金融、マスコミ等が挙げられますが、いずれも扱っている金額が大きいのが特徴です。

例えば、テレビ業界といえば斜陽業界で将来性がなく、給与が下がっていくのではないかと思います。しかし、他の業界に比べればまだまだ儲かる業界で下がったとしても近い将来にメーカーよりも給与が低くなる可能性は低いのではないでしょうか。
具体的にTBSとキヤノンの一人当たり売上高を比べてみましょう。

TBSの一人当たり売上高

決算期 売上/人 営業利益/人 経常利益/人 平均年収
2009/3 73.9 3.7 4.0 1,471万
2018/3 65.2 3.4 4.8 1,632万

なお、TBSテレビ単体の一人当たり売上高をみるとの従業員数は2018年3月期で187.5百万円と高い数字になっており、一人当たりの経常利益でみても8百万と高い給与を払える余力があることがみてとれます。TBSの場合は不動産が収益性が高いという理由もありますが…

キヤノンの一人当たり売上高

決算期 売上/人 営業利益/人 経常利益/人 平均年収
2008/12 24.5 3.0 2.9 716万
2017/12 20.6 1.7 4.8 782万

上記のようにテレビ業界が斜陽業界とはいってもまだまだ一人当たり売上高は高く、恵まれているといえます。

労働組合の状況

労働組合の状況からはもちろん労働組合が結成されているかどうかという情報も読み取れます。
加えて、これは企業にもよりますが、管理職になると労働組合から脱退することも多く、管理職がどの程度の比率なのか推測するヒントになることもあります。
新日鉄住金の場合は、グループ会社全体での加入数となっているので、この推測はすることはできませんが、単体決算しかしていない会社の場合は、上記のような推測をすることが可能です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
平均年収を知るだけならとグーグル先生で検索すれば出てきますが、そのもととなった原文にあたってみて色々考えると得られるものがあるのではないかと思います。

コメント