携帯電話業界は給与水準も高めの業界として就活生にも人気の業界です。
参入障壁が高い業界でプレイヤーとしては、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクと競合先が限られることが高収益、ひいては高待遇の理由となっていますが、複数内定をもらった場合、どこに就職すべきでしょうか。
又、転職する際にどこに転職すべきでしょうか。
人によって重視する項目が変わってくるかと思いますので、
①給料や退職金等の待遇
②有給休暇消化率、残業時間等のワークライフバランス
の観点からNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの比較をしてみました。
皆様の就職活動や転職活動の参考になると幸いです。
給料や退職金等の待遇面からの比較
平均年収による比較
まずは平均年収による給料面の比較です。
年 | ドコモ | KDDI | ソフトバンク |
---|---|---|---|
2009年 | 8,072,000 | 9,049,623 | 9,633,554 |
2010年 | 8,030,000 | 8,985,072 | 9,694,144 |
2011年 | 8,121,000 | 8,838,117 | 10,051,455 |
2012年 | 8,132,000 | 8,980,859 | 10,582,968 |
2013年 | 8,169,000 | 9,067,548 | 10,973,121 |
2014年 | 8,289,000 | 9,396,971 | 11,463,644 |
2015年 | 8,479,000 | 9,763,079 | 11,007,184 |
2016年 | 8,648,000 | 9,510,045 | 11,643,307 |
2017年 | 8,739,000 | 9,532,136 | 11,647,660 |
9年平均 | 8,297,667 | 9,235,939 | 10,744,115 |
平均年齢(2017年) | 40歳 | 42.4歳 | 40.5歳 |
ソフトバンクは、ホールディングスとなっていますので、比較対象としては適切ではありませんが、ドコモとKDDIを比較すると総じてKDDIの方が年収が高くなっております。
これは平均年齢がKDDIの方が高めであるという理由と残業時間が多いという理由が考えられ、一概にドコモの方が待遇がいいということにはなりません。
年 | ドコモ | KDDI | ソフトバンク |
---|---|---|---|
2007年 | 8,092,000 | 8,704,966 | 9,033,358 |
2008年 | 8,257,000 | 8,900,669 | 7,801,080 |
2009年 | 8,072,000 | 9,049,623 | 6,806,792 |
2010年 | 8,030,000 | 8,985,072 | 6,543,180 |
2011年 | 8,121,000 | 8,838,117 | 6,786,376 |
そこでソフトバンクは持株会社ではなく、事業会社のソフトバンクモバイルの数字を使って比較してみました。
結果、平均年収の金額だけでみるとKDDI>ドコモ>ソフトバンクという結果になりました。
こちらの方が全社員の平均年収という観点では実態を表しているかと思います。
初任給による比較
ドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
---|---|---|---|
大卒 | 209,480 | 220,500 | 220,000 |
修士 | 234,490 | 240,500 | 235000 |
博士 | 283,450 | 287,900 | 250,000 |
※2017年4月時点の数字
まず大卒、修士では、KDDI>ソフトバンク>ドコモという初任給となっていますが、注目すべきは博士卒の初任給でしょう。
大企業では、年齢と職歴で概ねバンドが決まっており、博士卒の初任給は同年齢(27歳、28歳)の方の基本給を推定する上で参考になります。
これによると博士卒の基本給はKDDI>ドコモ>ソフトバンクとなっており、ソフトバンクは初任給は高めだが、その後基本給が一律に伸びていく会社ではないのではないかと読み取れます。
実際、KDDIとドコモは日本の大企業によくみられる年功序列型の給与体系となっており、30代前半まではそれほど差がつかずに一律昇進していく形になっています。
一方で、ソフトバンクは博士卒の基本給も25万~という表記になっているように一律25万ではなく、人によってはもっともらっている方もいると考えられます。
ソフトバンクは給与体系も基本給は低めでボーナスで還元する給与体系となっており、ソフトバンクは6カ月~10か月と評価によって大きく差がつくことになります。
一方で、ドコモやKDDIは評価によって大きな差はつかず、6カ月程度のボーナスが標準的です。
管理職比率による比較
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | |
---|---|---|---|---|---|
ドコモ | NA | 35.7% | 56.4% | 53.7% | 53.2% |
KDDI | 33.2% | 36.5% | 38.8% | 40.2% | 40.5% |
ソフトバンク | NA | NA | NA | NA | NA |
※CSR報告書、統合報告書より作成
NTTドコモは2016年の管理職比率が53%、KDDIは40%と企業として非常に高い数字となっています。ビジネスが安定しており、リストラを実施していないため、企業の人員の高齢化が進んできています。これからビジネス環境に変化があれば、従来通り年功序列で一律昇格させるということは難しくなってくる可能性があります。
ソフトバンクは管理職の人数は開示はされていません。
退職金による比較
退職金という要素も生涯年収を考える上では重要な要素になってきます。
退職金には、退職所得控除という税制上の優遇があり、給与所得に比較して税金の負担が極めて小さいからです。
KDDIとドコモは確定給付型の企業独自の企業年金と確定拠出年金があり、ソフトバンクは確定拠出年金のみであるという違いがあります。
一般的にいうと企業独自の年金制度がある方が給付額は手厚く、ソフトバンクは退職金も給与に含まれているというどちらかというとITベンチャー的な考え方をしています。
もちろん確定拠出型にも良い面はあり、従業員がリスクを負っている反面、基本的に自分でポートフォリオの配分を決めて運用するため、リスクをとって増やせる可能性がある点や自己都合退職でも積立額は確保されるという利点があります。
確定給付型は運用リスクは企業が負っており、給付額が高めであるというメリットはありますが、企業年金は若い頃はベースとなる基本給があがらず、勤続年数を積み重ねて管理職になってから積立額が増える点や、自己都合で退職すると退職事由別係数というもが掛けられてしまい、支給額が減額されてしまうという欠点があります。又、JALのように企業業績が悪化すると減額のリスクもあります。
定年まで勤務する予定であれば、KDDIやドコモのような企業年金型の方が適しているでしょうし、経験を積んで、起業したいですとか転職したいという方にはソフトバンクの方が退職金の制度から見ても、社風から見ても向いているかと思います。
ドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
---|---|---|---|
一人当たり 年金債務残高 |
13.9 | 11.3 | 不明 |
一人当り勤務費用 | 0.71 | 0.41 | 0.12 |
2017年3月期の有価証券報告書の退職給付注記 ソフトバンクは確定拠出年金の費用処理額。
Gr全体の平均なので、連結の従業員が多い(単体の従業員の占める割合が低い)ソフトバンクが低めにでますし、完全に参考情報ですが、上記の通りとなります。
有休消化率、残業時間等のワークライフバランスによる比較
次に有給休暇消化率や残業時間等のワークライフバランスはどうかという観点による比較です。
■残業時間、時給換算による比較
ドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
---|---|---|---|
平均年間労働時間 | 1905.3 | 1,919.2 | 非開示 |
推定時給 | 4586.7 | 4,966.7 | – |
平均残業時間 | 22.0 | 27.5 | 33 |
※2017/3月期の数字CSR報告書や統合報告書の数字から作成しております。
これによるとソフトバンク>KDDI>ドコモの順に残業時間が多くなっており、平均年収と年間の労働時間から時給を推定するとKDDIが5,000円近くとトップとなります。
業務量と給与のバランスという面でみるとKDDIとドコモがやはり待遇的にはよいようです。
又、KDDIとドコモが年功序列型で若手の抜擢は少ない一方でソフトバンクは成果主義的で風土があり、賞与の金額にも大きな差がつきますし、優秀であれば30歳前後で管理職というケースもあり、年功序列で徐々に上がっていくというよりも自分の実力で上がっていきたい方にはソフトバンクの方が向いているかと思います。
■有給消化率による比較
有給消化日数 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 |
---|---|---|---|---|
ドコモ | 18.1 | 18.2 | 18 | 19.2 |
KDDI | 11.8 | 13.1 | 13.1 | 12.8 |
ソフトバンク | NA | NA | NA | NA |
有給の消化率については、ドコモが突出して高く、有給消化率は90%を超えています。
KDDIは60%台とそこそこの水準、ソフトバンクは開示がありませんが、転職口コミサイトによると50%台となっています。
■離職率による比較
ドコモ | KDDI | ソフトバンク | |
---|---|---|---|
離職率 | 1.16% | 1.11 | NA |
※2017/3月期の数字をCSR報告書の数字を元にまとめています。
やはりドコモやKDDIは長く働きやすい会社のようで離職率は1%台と安定しています。
ソフトバンクは開示していないので、わかりませんが、ドコモやKDDIに比べると人の出入りが激しいのは、社風や勤続年数、世の中に出ている求人数をみても明らかかと思います。
まとめ
ドコモ、KDDI,ソフトバンクといずれもいい企業なので、どこに就職したらいいかは、各人が何を重視するかで決まってくるかと思います。
・KDDI
一定年齢までの年功序列による安定的な高い給与を一番重視するのであれば、KDDIがおすすめです。
高給ホワイト企業?KDDIの年収・ワークライフバランス等の解説
・NTTドコモ
ワークライフバランスと給与のバランスを重視するのであれば平均年収と有給休暇消化率及び残業時間をみてもドコモがおすすめです。
・ソフトバンク
ある程度は年功序列で上がっていきますが、成果が他の同期と同じであれば、給与面ではKDDIやドコモの方が上でしょう。
若手の抜擢も年功序列型の企業に比べて多いということから自分が抜擢される自信がある、年功序列ではなく、成果主義がいい、将来独立や転職を考えているという方には向いている企業です。
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