隠れ優良企業は、就職ランキングに掲載されるような会社ではありませんが、給料も高く
事業内容も優良な企業な就職倍率に対してコストパフォーマンスがよい企業を指します。
三洋貿易も東証一部には上場していますが、BtoBの専門商社で知名度は高くなく、穴場といえるのではないでしょうか。
今回はニッチな分野に特化した専門商社である三洋貿易の業績推移と今後の将来性について調査しました。
三洋貿易ってどんな会社?
三洋貿易は、1947年旧三井物産の解体に伴い、同社神戸支店有志により
神戸で設立された創業70年を超える会社です。
事業内容は、ニッチなBtoBの分野に特化した専門商社で合成ゴム・化学品などの原材料や自動車用内装部品などの産業資材、その他機械や各種測定装置等を扱っています。
1964年には、本社を東京に移転し、2012年10月に東証2部に上場、2013年10月に東証一部に指定されています。
三洋貿易の業績
業績推移(連結)
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 営業利益率 |
---|---|---|---|---|
2010/9月 | 47,463 | 1,958 | 2,084 | 4.1% |
2011/9月 | 48,790 | 2,182 | 2,292 | 4.5% |
2012/9月 | 48,070 | 2,249 | 2,366 | 4.7% |
2013/9月 | 51,075 | 2,440 | 2,772 | 4.8% |
2014/9月 | 58,618 | 3,178 | 3,516 | 5.4% |
2015/9月 | 60,672 | 3,606 | 4,110 | 5.9% |
2016/9月 | 59,908 | 4,052 | 4,274 | 6.8% |
2017/9月 | 67,738 | 4,938 | 5,270 | 7.3% |
一人当たり売上高・営業利益(連結)
高い給料(2017年9月 933万円)を払えるだけの業績をあげている会社といえます。
費目 | 2017/9 |
---|---|
売上高 | 67,738 |
売上原価 | 55,473 |
売上総利益 | 12,265 |
粗利率 | 18.1% |
販管費 | 7,325 |
販管費比率 | 10.8% |
販管費内訳 | |
給与手当 | 2,886 |
福利厚生費 | 480 |
退職給付費用 | 96 |
人件費計 | 3,462 |
売上高人件費比率 | 5.1% |
上記は会社のコスト構造の把握のため損益計算書を抜粋し、販売費及び一般管理費の内訳から人件費に関する費用を抜き出したものです。
粗利率は18%ですが、販管費率は10%となっており、人件費は売上高の5%程度、販管費の47%を占める費用になっています。
上記のように技術的なサポートができるという点が強みとなっているので、人が財産といえる会社です。そのため、給与も高くなっているのでしょう。
セグメント別の業績
セグメント構成
まずセグメント別の売上構成ですが、化成品が40%近くを占めており、機械資材は3割程、
海外現地法人が2割、残りが国内子会社となっております。利益については化成品が3割、機械資材が4割超と逆転し、機械資材の利益率が高いということが見て取れます。
化成品
ここ最近売上は伸び悩んでいますが、営業利益が伸びているセグメントになります。
化成品セグメントはゴム事業部と化学品事業部に分かれています。
ゴム事業部は自動車業界中心に合成ゴムやゴム補強・充填剤等を扱っています。
化学品事業部では、高付加価値化学品の輸入、国内販売等を行っています。
近年はM&Aも活発で2016年2月には化学品事業部で紫外線吸収剤、光重合開始剤、ウレタン硬化剤など工業化学薬品の輸入を手掛けるソート(売上高約17億)を完全子会社化しています。
化成品セグメントの従業員数は、17/9時点では68名であり、一人当たり売上は392百万円、一人当たり営業利益は24百万と高い水準になっています。
営業利益率は6.1%ですが、卸売業としては高い数字です。
機械資材
売上、営業利益ともに右肩上がりで伸びているセグメントになります。
従業員数は、17/9時点では118名であり、一人当たり売上は183百万円、一人当たり営業利益は21百万と高い水準になっています。営業利益率は11.6%とここ最近の全社の利益率が上がってきているのは利益率が高い機械資材セグメントが成長してきて全社業績に占める割合が高まってきているからといえます。
機械資材セグメントは、ペレットミルおよび関連部品、木質バイオマス関連機器を扱う機械・環境事業部自動車シート用本革、シートヒーター、ランバーサポート等を行う産業資材事業部、各種検査・試験機器・医療機器等を扱う科学機器事業部で構成されています。
海外現地法人
海外現地法人は売上高、利益ともに浮き沈みがあります。
従業員数は、17/9時点では79名であり、一人当たり売上は191百万円、一人当たり営業利益は9.2百万,利益率は4.8%と現状利益水準は低めとなっています。
海外現地法人としては、北米地域のSanyo Corporation of Americaやアジア地域の三洋物産貿易(上海)有限公司等があります。Sanyo Corporation of Americaは売上高80億、経常利益2億と規模が大きく、駐在にいくとしたらアメリカの可能性が高いかもしれませんね。
国内子会社
国内子会社については、売上は減少傾向にあり、利益は微増傾向にあります。
従業員数は、17/9時点では15名であり、一人当たり売上は272百万円、一人当たり営業利益は36百万,利益率は13.1%と売上が落ちたにもかからわず利益は減少しなかったため、高い水準となっています。
代表的な子会社としては、石油ガス、海洋、地熱、温泉などの資源開発機材を取り扱うコスモス商事や精密化学品、医薬中間体等を扱うケムインターが挙げられます。
海外売上高
海外への展開状況についてもみてみましょう。
上記は仕向地別の海外売上高ですが、2014年が34%に対して2017年が35%程と大きく伸びてはいませんが、その他に含まれるASEAN地域への売上を近年伸ばしてきています。
財務面の安全性
決算期 | 自己資本比率 |
---|---|
2015/9 | 62.1 |
2016/9 | 62.7 |
2017/9 | 61.1 |
自己資本比率は6割を超えており、卸売業としては高い水準です。堅実な経営をしていることが見て取れます。
CFについても営業CFは毎年黒字でFCFも2012年と2017年を除いては黒字になっており、比較的安定しています。
17/9時点では、有利子負債1,655百万に対して現金同等物が2,601百万と実質無借金経営です。安全性は高い水準といえ、問題ありません。
将来性
将来性については、三洋貿易は2020年の中期経営計画を出しており、ヒントになるかと思います。
中期経営計画によると2020年9月期までに連結経常利益50億以上、ROE15%以上、自己資本比率50%以上という目標でしたが、数字目標を3期早く達成してしまっています。
基盤事業については、自社の強みのある分野に特化するして売上規模と成長性がともに高い分野に選択と集中をするというオーソドックスなものですが、3期早く数字目標を達成してしまったことをみてもうまく回っているようです。
その他、地熱・海底資源開発関連機材や木質バイオマス・ガス化発電関連機材といった新規プロジェクトの立ち上げやグローバル展開の加速等を掲げています。
就職や転職を目指すのであれば、こういった会社の中期経営計画にも目を通しておきたいところです。
まとめ
総合商社やトップクラスの専門商社に比べると売上規模も従業員数も地味であまり知られていませんが、業績の伸びや給料、一人当たり売上・利益等の指標をみても優良企業といえます。
就職人気ランキングにとらわれずにこういったニッチ分野の企業を回ってみるのも面白いのではないでしょうか。
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