総合商社の雄三菱商事の年収、福利厚生、企業年金、有給消化率等のワークライフバランスを調査しました。三菱商事というと年収ランキング等で常にトップクラスに位置していますが、待遇の方はどうでしょうか。
有価証券報告書と会社のHP等から待遇を探るデータを調査しています。
三菱商事の年収・勤続年数の推移
有価証券報告書の提出会社の状況より三菱商事の年収・勤続年数のデータを集計・グラフ化しております。
年 | 従業員数 | 平均年齢 | 勤続年数 | 年収 |
---|---|---|---|---|
2009年 | 6177人 | 42.9歳 | 19.1年 | 13,553,624 |
2010年 | 6220人 | 42.9歳 | 19.2年 | 13,019,036 |
2011年 | 6205人 | 43.1歳 | 19.3年 | 13,587,780 |
2012年 | 6275人 | 42.9歳 | 18.9年 | 14,128,511 |
2013年 | 6323人 | 42.8歳 | 18.9年 | 14,193,334 |
2014年 | 6358人 | 42.8歳 | 18.7年 | 13,552,340 |
2015年 | 6322人 | 42.6歳 | 18.6年 | 13,757,886 |
2016年 | 6290人 | 42.6歳 | 18.5年 | 14,459,499 |
2017年 | 6233人 | 42.5歳 | 18.5年 | 13,862,987 |
ここ9年平均の給料は13,790,555円(13,019,036円~14,459,499円のレンジ)です。
ここ9年で最も低い年であっても1,300万円台というのは羨ましい限りの年収水準です。
もう少し長いスパンでみると2001年の1,082万というのが底で、やはり1千万台以上の給料となっています。
年収ランキングの上位のコンサル会社等はアップオアアウトの代わりに年収が高く、勤続年数が短いケースが多いですが、三菱商事の場合は勤続年数も18年~19年と長く勤務できる風土となっていると考えられます。日系企業では最高峰の高年収企業といえます。
三菱商事の年収・基本給・退職金等の待遇
給与・基本給
(学士卒) : 月給 255,000円
(修士卒) : 月給 290,000円
※2017年4月実績
2016年4月実績ですと大学院卒:月給275,000円、大学卒:月給240,000円でしたから1万5千円程のベースアップがされていることになります。
22歳の学卒で基本給25万超え、24歳の修士では29万とやはり他業種に比べ頭一つとびでています。総合商社は、基本給が23万程度だった時は2年目に基本給が10万円近く昇給するという話を聞きましたが、1年目から高い給与にする方針に変わってきているのでしょうか。
修士で基本給が29万という企業は中々ありませんし、賞与も業績がいいときは7カ月~10カ月程度出ていたので、高収入であることは間違いないです。
給与カーブとしては、メーカーが年功序列で少しずつ上昇していき、係長クラスから大きく上昇し始めるのに対して若い時から基本給がグッとあがり、残業次第では入社6,7年目の20代で1,000万に到達します。30歳になると基本的にはほとんどの方が1,000万を超えています。
メーカーの場合は、入社6,7年目では残業をしたとしても700万程かと思いますので、それに比べると破格の待遇といえます。
これでも同業他社に比べると20代の内は若干安いといわれております。
■残業時間と労働時間あたり時給
2015.3 | 2016.3 | 2017.3 | |
---|---|---|---|
平均給与 | 13,757,886 | 14,459,499 | 13,862,987 |
平均年間労働時間 | 1951.14 | 1913.58 | 1941.8 |
推定時給 | 7051.2 | 7556.3 | 7139.2 |
平均年間残業時間 | 295.2 | 274.8 | 295.2 |
月平均残業時間 | 24.6 | 22.9 | 24.6 |
これだけ給料がいいと例え仕事内容に不満があっても中々辞めることはできないだろうと思います。一度生活水準を上げると下げるのは難しいですからね。三菱商事の2017年度統合報告書によると月平均の残業時間は20時間半ばで想像よりは多くありません。この数字を元に所定労働時間の7時間15分と推定年間休日の120日、有給日数の20日に有給消化率をかけて労働時間あたりの時給を計算すると時給7,000円超となります。
但し、注意点があります。上記の残業時間は管理職を除くという注がついています。
下記で紹介するように総合商社は、10年目程で多くが管理職に昇格し、管理職の比率も極めて高いですので、管理職になるとより激務になる可能性もあります。
■年収例
あくまで口コミを参考にした例であり、実際の年収は評価や配属により異なりますので、参考程度にとらえてください。
・新卒4年目 総合職 27歳 担当者 800万(内、ボーナス250万)
・新卒7年目 総合職 29歳 アシスタントマネージャー 1,000万
・新卒10年目 総合職 33歳 マネージャー 1,300万
・新卒14年目 総合職 37歳 課長 1,600万
給与としては、基本給自体も他の企業と比べると高いのですが、それ以上にボーナスが多いのが特徴です。全社共通の業績連動部分と所属部署の業績連動部分、個人評価の連動部分があり、所属部署の業績により賞与の金額が大きく変わってきます。
新卒9年目か10年目にマネージャーに昇格し、この頃から個人成績や所属部署の業績によって大きくボーナスに差がつくようになります。
年収に占めるボーナスの割合が高いことが特徴です。この職位まではほぼ全員があがることができます。
又、海外駐在すると海外赴任手当が大きいため、1,800万程度となります。
特に新興国にいくとハードシップ手当がつき、物価も安いため、家が建てられるぐらいお金がたまるといわれています。
又、事務職であっても新卒3年目で500万程度と下手をすると他企業の総合職よりももらっているケースもあります。
■どの程度の割合で課長(管理職)になれるのか?
2014/4 | 2015/4 | 2016/4 | 2017/4 | |
---|---|---|---|---|
社員数 | 6358 | 6322 | 6290 | 6233 |
一般職 (差引) |
502 | 397 | 377 | 394 |
一般職比率 | 8.6% | 6.7% | 6.4% | 6.7% |
総合職 | 5,856 | 5,925 | 5,913 | 5,839 |
男性 | 4,708 | 4,708 | 4,702 | 4,649 |
女性 | 1,148 | 1,217 | 1,211 | 1,190 |
管理職 | 3,889 | 3,930 | 3,970 | 3,972 |
男性 | 3,613 | 3,618 | 3,623 | 3,598 |
女性 | 276 | 312 | 347 | 374 |
管理職比率 | 66.4% | 66.3% | 67.1% | 68.0% |
男性 | 76.7% | 76.8% | 77.1% | 77.4% |
女性 | 24.0% | 25.6% | 28.7% | 31.4% |
※三菱商事HPのデータより作成
時点が4月1日時点のものしかなかったため、有価証券報告書の社員数(3月31日時点)を4月1日時点のものとみなして作成している。
三菱商事のHPでは人事データ集として、総合職の社員数が開示されています。
有価証券報告書で開示されている単体の従業員数を用いて三菱商事の一般職の比率を算出すると6~8%程度でした。総合職に比べてご結婚されて退職する方も多いかと思いますので、採用数の一般職比率よりも低い数字となっています。
又、目につくのが管理職比率の高さです。総合職の内、どのくらいが管理職になっているかというとなんと68%と7割近くが管理職となっています。
又、男性の総合職に限定していうと77%と実に8割近くが管理職です。大手企業の管理職比率は2割~3割程度が一般的といわれていますので、驚くべ気数字です。
ここにも総合商社の平均年収が高い理由が隠れていそうです。
三菱商事では、10年目ぐらいまで年功序列で昇進していき、多くが管理職になります。
従来までこの体制でお金が支払えるだけの収益を上げていましたが、今後どうなるかはわかりません。
企業年金
現役時代の給与が高く、厚生年金も多いが、それとは別に三菱商事企業年金基金(確定給付型)と退職一時金制度があります。国民年金と厚生年金、企業年金がもらえる3階建ての年金となっています。又、確定拠出年金も採用しているようですが、金額に重要性がないとのことで開示はされていません。
費目 | 金額 | 一人当たり |
---|---|---|
勤務費用 | 15,681百万円 | 203,217円 |
計/人数 | 77,164百万円 | |
残高 | 593,927百万円 | 7,696,944円 |
退職給付の給付の開示をみると一人当たりの勤務費用は1年で20万、退職給付債務は770万円です。上記は連結の数字で参考値ですが、三菱商事Grは8万人近くの従業員がいる一方で三菱商事本体の社員は6千人程度なので、三菱商事本体勤務の場合は、上記よりは圧倒的に高い退職金がもらえるはずです。
大企業平均の退職金が2,500万といわれていますので、定年まで勤めれば、4千万円以上にはなろうかと思います。
残業時間とワークライフバランス
■休日について
三菱商事の年間休日については、HPには掲載されていませんでした。
但し、完全週休二日制であること、子会社の年間休日は基本的に120日を超えているため、120日以上あります。
■労働時間と残業時間
勤務時間9:15~17:30
総合商社は基本7時間15分勤務で基本給が高いわりに残業時間の長さは別として所定労働時間は短いです。従って、時給換算すると高くなる傾向にあります。
■有給消化取得率
有給休暇取得 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 |
---|---|---|---|
取得率 | 52% | 64% | 66% |
※2017年度三菱商事統合報告書より作成
三菱商事としては、有給消化率70%を目指しているようで、着々と有給消化率が上昇しています。総合商社というと激務というイメージですが、残業時間や有給消化率をみるとそれほどでもないという印象です。
友人が大手商社に勤めていますが、出向先の状況に大きく左右されるようです。
子会社へ出向になっていたときは、結構のんびりしていたが、本社へ行くとかなりの激務となり、海外赴任をすると更に激務で精神的にはかなりタフな方かと思うのですが、精神的にまいっているようでした。まったりで高給が得られるとは思わない方がいいでしょう。
三菱商事の福利厚生等
■福利厚生
各種社会保険完備(雇用・労災・健康・厚生年金)、診療所、研修所、独身寮・社宅、育児休暇制度 等
■労働組合の有無。
あり。
■社員食堂の有無。
有。かつて社員食堂を廃止していたが、2009年5月に復活させています。夜間は、ワインや焼酎を提供するバーとして利用できるとのことです。商社は、部門でキャリアを積んでいくケースが多く、縦割りの意識が強いのですが、横の連携の場として復活させたとのことです。
三菱商事の採用状況について
■採用状況の推移
2014/4 | 2015/4 | 2016/4 | 2017/4 | |
---|---|---|---|---|
新卒 | 212 | 197 | 193 | 179 |
総合職 | 169 | 165 | 163 | 159 |
一般職 | 43 | 32 | 30 | 20 |
キャリア採用 | 12 | 11 | 13 | 0 |
一般職比率 | 20.3% | 16.2% | 15.5% | 11.2% |
中途比率 | 5.4% | 5.3% | 6.3% | 0.0% |
※三菱商事HPより作成
上記は、新卒と中途の採用数の比率や総合職と一般職の人数比の推移をまとめた表です。
総合商社の特徴として、一般職と呼ばれる総合職のサポートをする方の採用数が多いことが挙げられます。
給与水準としては、総合職に比べると低く、平均年収は半分以下ですが、年収が低い業界の総合職よりも高いケースもあります。
一般職の比率は、2014年には20%ありましたが、2017年には11%と低下してきています。これは、一般職の方にできる仕事は派遣社員の仕事に置き換わってきているのではないかと思います。
昔は、一般職の採用をしていた企業であっても現在は固定費を削るため、派遣社員で賄っており、もう正社員としての採用をしていない企業も多くあります。
総合商社はまだ余裕がある業界で一般職の方を採用することができるが、少しずつ削ってきているというのが実態なのではないでしょうか。
又、総合商社は、他の大手企業に比べると中途採用が多めであるのが特徴です。
多めとはいっても5%ですが、基本的には採用のハードルは高く、総合商社が進出しようとしている分野のメーカー社員ですとか、経理だと監査法人出身の公認会計士、法務だと法律事務所の出身の弁護士等一定以上の専門性を持った人間でないと中々採用されないでしょう。
三菱商事は転勤はあるの?
総合商社は、国内の全国転勤はもちろん、海外転勤も多いです。
私の知人も数名就職していますが、漏れなく海外に行っています。
三菱商事本体の国内の事業所は実は多くはありませんが、出向も多く、知人は新人から子会社へ出向していました。
有価証券報告書で役員の方の経歴をみても大体どの方も一度は出向しています。
又、2016年度の統合報告書では6,000人程の社員の内、3割程の1,800人程度が出向中である旨記載されており、出向は日常茶飯事です。
出向は基本的には、給与は本体と同等の給与体系で支払われるのですが、転籍となると話は別で、一定期間は差額が補填されるケースが多いですが、いずれは子会社の給与体系になってしまいます。
若いころの出向は、経営を学ぶOJTの意味合いで若手としてはそれなりのポジションで出向させることが多いですが、40代、50代となってくると給与水準を下げるための転籍を見据えた出向となるケースもありますので、注意が必要です。40代半ばになると片道切符での出向を打診されるケースもあります。
2016年度の有価証券報告書では子会社834社、持分法適用会社440社と日本企業でもトップクラスに関係会社が多い企業なので、全国各地へ転勤の可能性があります。
事業所名 | 場所 | 従業員数 | 比率 |
---|---|---|---|
本店(三菱商事ビル) | 東京都千代田区 | 1,365 | 36.0% |
本店(丸の内パークビル) | 東京都千代田区 | 2,272 | 60.0% |
関西支社 | 大阪府大阪市 | 105 | 2.8% |
中部支社 | 愛知県名古屋市 | 47 | 1.2% |
計 | 3,789 | 100.0% |
上記のように本社に勤務する財務経理や人事等のコーポレート部門は東京勤務の可能性が高いですが、例えば経理であれば、子会社や海外拠点へ現地管理要員として転勤の可能性が十分に考えられます。
三菱商事はリストラ実施したことがある?
現在は業績好調のため、有価証券報告書を見る限り、大々的なリストラはやっていないようです。
但し、三菱商事がトレーディング中心の収益構造であった総合商社冬の時代といわれた2000年には単体の従業員数が7,973人(連結42,050人)でしたが、2004年には5,609人(連結49,219人)に本体の従業員数が大幅に減少しています。一方で連結の従業員数は増えていることから三菱商事本体からグループ会社への転籍が行われたのではないかと推察できます。
実際に2002年度の有価証券報告書の退職給付の注記では割増退職金を2001年度に4,533百万円支払った旨の記載があります。これは転籍が行われる際に、退職という形が取られ、割増退職金が支払われたのではないかと推察できます。
現在は、トレーディング主体から事業投資主体にビジネスモデルを変えたため、冬の時代を脱し、好業績を上げています。但し、2016年3月期は資源関係の減損損失を計上し、経常利益が赤字になる等ボラティリティが高いビジネスの比重がまだまだ多いという認識は必要です。
■離職率
三菱商事のHPによると2017年3月の自己都合退職者の比率は0.85%と1%未満となっており、給与が高く辞める方がきわめてすくない組織となっています。
実際に聞く話でも三菱商事は例年新卒を100人~200人程度採用していますが、外資のコンサルやベンチャー企業へ成長を求めて転職する特殊なケースでの退職がほとんどで5年たっても辞めるのは数える程だそうです。
まとめ
事業をトレーディング主体から事業投資主体に変革し、業績も好調となっております。
給与もきわめて高く、サラリーマンとしては最高クラスの報酬水準の会社です。
年齢をとればとるほど、年収を維持して転職するのが難しくなります。市場価値以上に高い給料をもらえる素晴らしい会社といえます。
三菱商事のような優良企業は求人の応募が少なく、丁度転職活動をしようというタイミングで応募しているとは限りません。
そのような場合に、三菱商事に狙いを絞って、待つスタイルで転職活動をする方の転職方法について書きました。
・どうしても入りたい特定の企業に転職する方法
三菱商事のような大企業への転職を目指すのにおすすめの転職エージェントを下記記事で紹介しています。
又、就職活動中の学生の方向けの就活効率化サービスをまとめています。
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